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AI時代に求められる「自分の言葉」を育てる―埼玉県高校入試「My Voice」から考える自己表現力育成―

8月7日
読了時間: 7分

更新日:10月16日

「My Voice pitchトーク」のスライドを使って自己表現力を解説する講師と受講生

埼玉県高校入試「My Voice」がニュースになりYouTube公開されました

(上田祥子の本講演の様子もご確認いただけます)


2026年9月18日放送「ニュース930plus」より

導入の成果と変化


教師観、進路指導、教科教育、特別支援教育、保護者支援など、それぞれが異なる場所に学びを持ち帰っていました。

全員が同じ「正解」を持ち帰るのではなく、自分自身の経験や問題意識と結びつけ、自分の現場で何ができるかを考え始めたこと。それ自体が、今回の研修の大きな成果となりました。



導入した組織のプロフィール

依頼者名:株式会社NOLTYプランナーズ

対象:主に中学校・高等学校教員、自治体・教育関係者等 約50名

実施日:2026年8月7日



導入前の課題


令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜から、新たな面接「My Voice」が導入されます。

この変化は、中学校にとっては「送り出す側」、高校にとっては「受け入れる側」だけの課題ではありません。

中学校と高校の教員が学校種を越えて、これからの子どもたちにどのような力を育てたいのか、そのために日々の教育をどうつないでいくのかを共に考える契機でもあります。

特にAIが急速に普及し、情報を集めたり、整った文章をつくったりすることが容易になる中で、「自分は何を感じ、何を考え、何を大切にしているのか」を自分自身の言葉で表現する力の重要性は、むしろ高まっています。

そこで今回、My Voiceを一つの入り口として、中学校・高校という学校種や立場を越えて、「自分の言葉」を育てる教育について共に考える研修を企画しました。

新しい入試への対応方法を学ぶだけではなく、子どもたちが日常の経験を振り返り、自分の思いや感情に言葉を与え、他者との対話を通して自己理解を深めていく。そのために中学校、高校それぞれの教育活動で何ができるのか。

入試制度の変更を、中高が共に新しい教育のあり方を考える機会にすることが、今回の研修の大きな目的でした。



選定の決め手とプログラム内容


上田祥子先生は、高校教員、埼玉県教育委員会指導主事として学校現場と教育行政の双方に携わり、現在は学校・大学・企業などさまざまな場で、「自分の言葉」を起点とした教育や組織づくりに取り組んでいます。

また、90秒で自分の考えを語り、他者がその言葉を受け止め、問い、対話する「Pitchトーク」を開発・実践し、自己理解・言語化・対話を日常の教育活動へ取り入れる方法を提案しています。

今回期待したのは、My Voiceという新しい入試制度そのものを解説することだけではありません。中学校・高校それぞれの立場から制度の背景にある教育的な意味を捉え、学校種を越えて「これからどのような力を子どもたちに育てていくのか」を共に考える場をつくることです。

制度と日常の教育実践をつなぎ、さらに参加者同士の対話を通して、それぞれが自分の学校や授業、進路支援へ持ち帰ることのできる研修を期待し、上田先生に依頼しました。


前半では、埼玉県教育委員会が公表している資料をもとに、新しい高校入試と現在の教育を取り巻く大きな流れとの関係を整理しました。

そのうえで考えたのが、「自分の言葉」はどのように育つのかという問いです。

子どもたちには、日々さまざまな出来事が起こります。しかし、出来事を経験することと、それを自分にとって意味のある「経験」として捉えることは同じではありません。


「あのとき、私は何を感じたのか」

「なぜ、あんなに嬉しかったのか」

「なぜ、あれほど悔しかったのか」

具体的な出来事と、そのときに生まれた感情を言葉でつなぎ、自分が何に心を動かされる人なのかを知る。その積み重ねが、自己理解や進路選択にもつながっていきます。


研修では、「具体と抽象の往還」「感情と言葉」「語彙と自己理解」などを切り口に、日常的な振り返りや対話が持つ意味を考えました。

後半は、参加者自身がPitchトークを体験。

「最近、心に残った生徒とのエピソード」という〈具体〉を振り返り、そこから「自分が大切にしたい教育」という〈抽象〉を見いだし、90秒で自分の言葉にして語りました。

さらに、聴き手はその言葉をまず「祝福」して受け止め、問いを返します。


My Voiceを「説明する」のではなく、教育に携わる大人自身が、自分の経験を振り返り、自分の言葉で語り、それを他者に受け止めてもらう。

その体験を通して、子どもたちのMy Voiceを育てるために必要な環境について考える2時間となりました。


制度の解説者として答えを提示するのではなく、制度変更の背景にある教育的な意味を参加者とともに捉え直し、それぞれが自分の教育実践へ翻訳するためのナビゲーター/ファシリテーターを務めました。

特に、参加者自身が「話す側」と「聴く側」の双方を体験する場を設計することで、My Voiceを評価する側の視点だけではなく、「自分の言葉を語るとはどういうことか」「その言葉を受け止めてもらうことにはどのような意味があるのか」を体感できる研修を目指しました。





導入後の効果と変化


「My Voiceは、入試のためじゃなく人生を語る練習」 「自分のことを自分の言葉で伝える力は、生徒が自分で幸せを掴んでいく力そのもの」

研修は定員40名で募集され、早期に満員となりました。また、夏季休業中で教育関係の研修・イベントが多く開催される時期にもかかわらず、当日のキャンセルはありませんでした。

研修後アンケートでは12名が回答し、満足度について11名が「満足」、1名が「やや満足」と回答しました。

また、「新たな気づきや変化を感じたか」という問いには12名全員が「感じた」と回答。「今後の教育活動等に活かせると思うか」という趣旨の問いについても、11名が「そう思う」、1名が「ややそう思う」と回答しました。

さらに研修終了後、参加者による自主的なSNS投稿も複数確認されました。研修で得た気づきをそれぞれの立場から意味づけ直し、自分自身の言葉で社会へ発信する姿が見られました。


アンケートや研修後の発信で特徴的だったのは、参加者の学びが「面接対策」に集中しなかったことです。

研修で扱った「具体と抽象の往還」については、国語科の教員だけでなく、社会科や特別支援教育に携わる参加者からも、自らの教育実践に活用できるという反応がありました。

さらに、研修後には、

「まずは現任校の仲間に学びを共有し、教職員間の研修でPitchトークを活用したい」

「高校入試制度の変化は、私たち中学校教育に携わる者へのメッセージだと受け止め、自校の学校教育に最大限活用したい」

「美術の授業と面接のそれぞれに生かしたい」

など、具体的な実践への意思も示されました。


学校教育だけではありません。

保護者支援に携わる参加者からは、「子ども自身が『私はこう思う』『私はこうしたい』と言葉にできること」や、「祝福の中で聴いてもらう体験」の重要性を、自身の仕事や子育てと結びつけて考えたという発信もありました。

同じ研修に参加していても、教師観、進路指導、教科教育、特別支援教育、保護者支援など、それぞれが異なる場所に学びを持ち帰っていました。

全員が同じ「正解」を持ち帰るのではなく、自分自身の経験や問題意識と結びつけ、自分の現場で何ができるかを考え始めたこと。それ自体が、今回の研修の大きな成果となりました。


研修を通して見えてきたこと


高校入試が変われば、中学校の教育も変化します。

しかし、その変化を「新しい入試にどう対応するか」だけにとどめるのか、それとも、子どもたちが日常的に自分を振り返り、自分の言葉を育てる教育へとつなげるのかで、その意味は大きく変わります。

今回の研修では、参加者自身がPitchトークを体験し、自分の経験を言葉にし、それを他者から受け止めてもらうことで、My Voiceを「評価されるもの」だけではなく、「育てていくもの」として捉え直す動きが生まれました。

入試制度の変更を、言葉を育む教育のチャンスにする。

制度に教育を合わせるのではなく、制度変更という力を、よりよい教育をつくるために使う。

その可能性を、参加者とともに確かめる機会となりました。



今後の展望


研修後には、参加者から校内研修でPitchトークを実践したいという声や、授業、進路指導、特別支援教育、保護者支援など、それぞれの現場への応用について具体的なアイデアが生まれました。

My Voiceへの対応は、特定の面接技法を身につけることだけを意味するものではありません。

日々の授業や学級活動、進路指導、探究活動などの中で、子どもたちが自分の経験を振り返り、自分の感情や考えに言葉を与え、誰かに語り、受け止めてもらう。

そうした小さな対話を学校の日常に増やしていくことで、「My Voice」は入試制度の名称を超え、「自分の声を育てる教育」へと広がっていきます。



お問い合わせ・資料請求

この事例で実施した研修のカリキュラム詳細や貴校・貴社に合わせたプランのご相談は、下記よりお気軽にお問い合わせください。






言葉と対話で、組織に変化が生まれる場をつくりませんか。

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